NPO湿潤治療(モイストケア)を推進する会

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2015/08/05(水曜) 10:55

会員の活動紹介-11

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今月は神奈川県の金沢文庫駅近く、庄司クリニック副院長 三浦靖彦先生にお話しを伺いました。

 

ー 医師としてのキャリアを教えてください。

 

消化器外科を中心に横浜市立大学病院、横浜市民病院、横浜掖済会病院、他で勤務後、現在に至っています。

 

ー 湿潤治療を知ったのはいつ頃ですか?

 

横浜掖済会病院にいた2005年くらいの時なんですが、そこは一般病院で患者さんの年齢も高く、その中に褥瘡の患者さんが多かったんです。大学病院にいたときには褥瘡の治療にはあまり縁が無く、あったとしても看護師さん任せで処置の経験が少なかったんですね。実際目の前に患者さんが多くいる状況になって、どういう治療法が良いのかといろいろ模索していたんです。それまでに行っていた褥瘡の処置の仕方も複雑で・・・。そんな時「傷の正しい治し方」という本に出会ったんです。この本を見たら大変わかりやすく、「これ簡単じゃない?」って始めたんですよ。

 

ー それまでには大学や以前の病院で体系的に湿潤治療を学ばれたことは無かったんですか?

 

ないです。この時が初めてでした。大学病院の時は外科に所属していましたが、すべてイソジンで消毒するのが常識でしたから。

 

ー 多くの先生方が湿潤治療に切り替える時は恐る恐るというか躊躇するようなんですが、先生はすぐに切り替えられましたか?

 

先ほど申し上げたように褥瘡の治療は殆ど初めてだったんですね。本にある湿潤治療の症例写真を見ればキレイに治っているし、手間も掛からない。しかも言ってること(書いてあること)も理に適っているのでやってみる価値があるんじゃないかなと思いました。褥瘡治療初心者だったからこそ、素直にできたんだと思います。

で、実際にやってみると感触も良いし、治りも良くて・・・。早速病棟内で広めていこうと思って外科の看護師さん集めて勉強会など開いていきました。

 

ー その時は病院として湿潤治療ができる状況だったのですか?

 

正式に切り替えたわけでは無いのですが、現場では私が責任者みたいな状況だったので勝手にできてましたね。ただし、他の科までは関われなかったです。

 

ー これほど結果としてキズが治ってるし、論理的なのに何故他の医師の方々は湿潤治療を否定するのでしょうか?

 

「否定」というより「考えない」じゃないですか?。ずっと消毒するのが当たり前とすり込まれているので疑問も持たない?。今までそうやっていたから、これからもそうやって行く・・・。

何の分野でも進歩しているじゃないですか。僕も今、消化器内科医として内視鏡なども行いますが、内視鏡の分野でも日々進歩しているわけです。いろいろなセミナー出たり、学会に参加したりして新しい処置の仕方を研究しないとどんどん遅れていってしまう。だけど、昔ながらのやり方でもできないこともない・・・。新しいことを取り入れようとする人は若くても年を取っていてもいろんな情報を入れていくが、そうじゃ無い人はそのままなんですよね。困ったことに過去ずっとそうやって(一応)治っているし、湿潤治療をしなくても治るキズは治っているのだから無理に新しいことをやらなくても良いという論理なんだと思います。

ある病院に勤務していたとき、僕が傷の手当てをしてガーゼを充てるワケです。そうすると上の先生がガーゼの(何枚か重なっている)表面の一番上の部分を外していくんです。ある時「何故ですか?」って聞いたら「君が直に触っているのでそのガーゼは汚染されている、キズに感染しないように外している」ということなんです。その当時は清潔・不潔という概念がそんな感じだったから・・・。外科医は「清潔・不潔の概念」をたたき込まれていて、看護師からガーゼの受け渡しの仕方まで徹底して教育されていくので、だからそういう思考回路から脱するのは難しいんだと思いますよ。

大学病院などの大きな組織の中にいると、トップがそのような概念を持っていると下がそれをはじき飛ばして新しいことを主張していくのは難しいんだと思います。

でも実は外科の手術でも昔と常識が違っていることは結構あるんですよね。例えば腹腔鏡の手術なんかで昔の常識が飛んでしまっていることもあるわけで、昔はこうしなきゃいけないと言われていたことが今は必要ないことはいくらでもあるんです。それ以外にもたくさん同様なことはあって、その中でもキズの治療なんかは最たる物ですよね。でもこんな簡単なキズの治療が変わっていかないのが不思議なくらいです。

 

ー 湿潤治療を行った上で困ったことはありましたか?

 

最近は湿潤治療も知れ渡ってきたのでそんなことは無いと思いますが、初期のうちは患者さんの理解を得るのが難しかった記憶もあります。消毒しないことへの抵抗、「水道水で洗えばいいですよ」っていうところに抵抗が結構あったようで、(病院の)外で「この病院はろくな治療をしない」と言っていた方がいたという、風の噂で耳にしたことがありましたね。それはまずいということで、(水道から直接でなく)滅菌生理食塩水で洗い流したりとか、それを浸した綿球で拭ったりといったパフォーマンス(?笑)で患者さんに不安を与えないような処置をしたこともありました(笑)。消毒とか滅菌しなくても良いと言うことを理解していただくことが大変でした。

でも実はこれも困ったことがあって、湿潤治療を行っている病院として夏井先生のサイトに登録していたので、それを見てきた患者さんがその処置を「消毒している」と誤解されてもまずいなあと(笑)。

 

ー 湿潤治療を行っていて印象的なことはありますか?

 

子供のヤケドはホントに治りが早いです。とくに乳幼児は感動的に・・・。親御さんの動揺が激しいのでそういう意味では効果が大きいかもしれません。

 

ー 湿潤治療普及のためにはどうすればよいでしょうか?

 

以前の病院ではベテランのコメディカル(病院内の医療スタッフ)の中には受け入れられない人もいて、そのような人を説得していくよりも若い人、積極的に新しいことを受け入れてくれる人に知識を広げていってもらうことに力を注いでいました。

また「消毒信仰」(?笑)を無くすのはなかなか難しいですね。これは医療関係者のみならず一般の方に対してもですけど。そのためにはいろいろなメディアに取り上げていただくのが効果的なのだと思います。

また、当クリニックの院長が校医として関わっている学校もあるので子供への啓蒙ができていければ良いと思ってます。

 

 

庄司クリニック

http://www.shoji-clinic.jp

 

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